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12月「ねついとわたし」

講演会で興味深い話を聞いた。

昨今の就職活動で重視されるのは社会性と、「空気を読む力」だそうである。

ここで言う「空気」とは、勤務時間終了時に上司から酒の席に誘われたら断らないことを言うらしい。
と言うのは、最近の新入社員は上司から誘われても「今日は予定がありますので」と断ったり
「それは業務命令ですか?」と質問したりするようで、上司としては、とても付き合いにくいのだそうである。

我が国が終身雇用制を守り、組織は人であるとして、勤務時間以外の繋がり(主に酒の席)を重視してきた時代の名残とも言える。

確かに、人と人との繋がりは大切である。また酒の席は、上司が部下を労う機会であると同時に、
部下が上司を立てる分かりやすい機会でもある。双方が活躍の場を得る絶好の機会であったと言えよう。

加えて、酒の席での発言は非公式なものであり、叱責や失言があったとしても、業務成績には影響しない。ここで重視されるのは、酒の席を共にして、本音を語り合い、お互いのことをよく知る=人間関係を深める、
ということである。

こうした形で、非公式ながら人間関係が構築されると、個々の能力よりも「あいつのことは良く知っている」という安心感や信頼感から、失敗をカバーされたり、昇進などの推薦を受けやすくなったりする効果がある。

しかしながら、それは組織内部に限った話であり、同業種間では有利になる面はあったものの、昨今のように高度に情報化された社会では、必ずしも有利とは言えない。第一、終身雇用制度は既に失われており、組織を守るために人材が削られる程である。

ここでも人脈を築くことが有利には違いないが、就職氷河期を迎えて人材そのものが枯渇している状況下では、職員一人辺りの業務が膨大で、アフターファイブなどと言っては居られない。酒の席に顔を出すくらいなら、資格の一つも欲しいというのが本当のところであろう。

別の理由もある。それは、仕事上で毎日顔を合わせている相手と、わざわざプライベートな時間まで一緒に過ごすことへの抵抗感である。

単に自分の時間が欲しい、というだけではない。

仕事に対する姿勢を、勤務時間以外のところで測られることへの抵抗感である。

ある企業を就職先に選ぶとき、私利私欲のために試験を受ける人があるだろうか。一部の有能な野心家であれば、そういうことがあるかも知れないが、多くは自分の興味や力量を踏まえた上で、社会貢献を目指して試験に臨んだ筈である。

企業理念に対する熱意は、形は違ったとしても、誰もがもっていると考えるべきであろう。ということは、仕事に対する熱意も同様であり、単に付き合いが良いかどうかで能力を判断することは危険だと言うことである。

人付き合いが良いに越したことはないが、それはあくまで仕事上のことであり、それ以外のところまで判断材料に組み込むとしたら、人を計る指標そのものが間違っていると言えるだろう。

とは言え多くの人は、分かり易い指標を好む。

願わくば、社会を構成する人々が冷静な大人になり、目先の空気に捉われることなく、必要な業務に当たれるようになって欲しいものである。
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